専門知識不要!ノーコード/ローコードで自社に最適なチャットボットを作る方法
はじめに:中小企業におけるチャットボット導入の現実
近年、顧客からの問い合わせ対応、社内FAQ、Webサイトでの情報提供など、様々な場面でチャットボットの活用が進んでいます。特に中小企業では、限られた人員で多くの業務をこなす必要があり、業務効率化や顧客満足度向上の手段としてチャットボットに大きな関心が寄せられています。
しかし、「AIやプログラミングの知識がないから難しい」「専門のエンジニアを雇うコストがかかるのではないか」といった懸念から、導入に踏み切れないケースも少なくありません。
そこで注目されているのが、「ノーコード」や「ローコード」で開発・運用できるチャットボットツールです。これらのツールを活用すれば、プログラミングの専門知識がなくても、自社の課題に合わせたチャットボットを比較的容易に作成・導入することが可能になります。
この記事では、中小企業のビジネスパーソンがノーコード/ローコードチャットボットを活用し、自社に最適なチャットボットを導入・運用するための具体的な方法と、その可能性について解説します。
ノーコード/ローコードとは何か? 非エンジニアが知っておくべき基礎知識
チャットボット開発における「ノーコード」と「ローコード」は、開発におけるコード記述量を減らす、あるいは不要にすることで、専門知識がない人でも開発を可能にするアプローチです。
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ノーコード(No-code): 文字通り、コードを一切書かずにソフトウェアやシステムを開発できる手法です。多くの場合は、視覚的なインターフェース上で要素をドラッグ&ドロップしたり、設定項目を選択したりする操作だけでシステムを構築します。チャットボットにおいては、シナリオ分岐やQ&A設定などをGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)上で行えるツールがこれに該当します。
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ローコード(Low-code): 最小限のコード記述やカスタマイズは必要になるものの、大部分は視覚的な開発ツールや事前に用意されたモジュールなどを活用して開発する手法です。ゼロからフルスクラッチで開発する場合に比べて、圧倒的に開発期間やコストを削減できます。ノーコードツールでは実現できないような、やや複雑な連携やカスタム機能を追加したい場合に有効な選択肢となります。
これらのアプローチの最大のメリットは、専門的なプログラミングスキルを持たないビジネスパーソンでも、ツールを使えば自社のニーズに合わせたシステム開発に関われる点です。
なぜノーコード/ローコードチャットボットは中小企業に向いているのか?
ノーコード/ローコードチャットボットが、特に中小企業にとって魅力的な選択肢となる理由をいくつかご紹介します。
- 開発コストと期間の削減: 専門のエンジニアに依頼したり、内製のために新たな人材を確保したりする場合に比べ、開発コストや期間を大幅に抑えられます。ツールの利用料のみで始められるケースが多く、初期投資のハードルが下がります。
- 社内リソースの活用: 現場の担当者が自らチャットボットを開発・運用できるため、外部ベンダーとの細かな仕様調整の手間が減ります。また、実際に業務を理解している担当者が直接設定を行うことで、より実情に即したチャットボットを構築しやすくなります。
- 迅速な改善と柔軟性: 導入後も、現場のフィードバックを受けてQ&Aの内容を追加したり、シナリオを変更したりといった改修を迅速に行えます。ビジネス状況の変化に合わせて柔軟に対応できる点が強みです。
- IT人材不足への対応: IT人材の確保が難しい中小企業でも、既存の従業員がITツールを使いこなせるようになるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一歩として有効です。
非エンジニアが始めるノーコード/ローコードチャットボット作成ステップ
専門知識がなくても、以下のステップで自社に最適なチャットボット作成を進めることができます。
ステップ1:導入目的とターゲットの明確化
「なぜチャットボットを導入したいのか?」という目的を具体的に定義します。 * 顧客からの問い合わせ件数を減らしたい * よくある質問に自動で回答したい * Webサイトの離脱率を下げたい * 社内からの簡単な質問に自動で答えたい * 特定の情報を効率的に提供したい
目的が決まったら、誰(顧客、従業員、Webサイト訪問者など)に向けてチャットボットを提供するのか、ターゲットユーザーを明確にします。これにより、どのような質問に対応すべきか、どのような情報を提供すべきかの方向性が定まります。
ステップ2:対応範囲とシナリオの設計
チャットボットにどこまでの範囲の質問に対応させるかを決めます。最初は、よくある質問や定型的な問い合わせなど、範囲を絞ることをお勧めします。
次に、ユーザーからの質問に対して、チャットボットがどのように応答し、どのような流れで会話を進めるかの「シナリオ」を設計します。これは、紙に書き出したり、フローチャートを作成したりすると分かりやすいでしょう。 * 例:ユーザー「送料はいくらですか?」→ボット「お届け先を教えてください。」→ユーザー「東京都です。」→ボット「東京都への送料は〇〇円です。」
ノーコードツールでは、このシナリオを視覚的なエディタ上でブロックを繋げるように設定できます。
ステップ3:ツール選定とアカウント登録
目的と対応範囲に合ったノーコード/ローコードチャットボットツールを選定します。後述する選定ポイントを参考に、複数のツールの無料トライアルなどを活用して比較検討することをお勧めします。 ツールが決まったら、アカウント登録を行い、管理画面にアクセスします。
ステップ4:Q&Aデータとシナリオの入力・設定
選定したツールの管理画面上で、事前に準備したQ&Aデータやシナリオを入力・設定していきます。 * Q&A形式: 「質問」と「それに対する回答」をセットで登録します。同じ質問でも、様々な言い回し(類義語)を登録することで、チャットボットがより多くの質問を認識できるようになります(多くのツールにこの機能があります)。 * シナリオ形式: ステップ2で設計した会話の流れを、ツールのGUI上で設定します。ボタンの設置や、特定キーワードに対する応答などを設定します。
ステップ5:テスト運用と改善
設定が完了したら、実際に様々な質問をしてみて、意図した通りにチャットボットが応答するかテストを行います。社内メンバーに協力してもらい、様々なパターンで試してもらうことが重要です。 期待する応答が得られない場合は、Q&Aデータの追加・修正、シナリオの見直しを行います。
ステップ6:本番公開と効果測定
テストで問題がなければ、Webサイトや社内ツールなど、決められた場所にチャットボットを設置し、本番運用を開始します。 運用開始後も、チャットボットの利用状況(どのような質問が多いか、回答できなかった質問は何かなど)を定期的に確認し、Q&Aやシナリオを継続的に改善していくことが、チャットボットをより「最適な」ものにしていく上で不可欠です。多くのツールには、これらの分析機能が備わっています。
サービス選定時のチェックポイント(非エンジニア向け)
数多くのノーコード/ローコードチャットボットツールが存在します。自社に最適なツールを選ぶために、以下の点をチェックしましょう。
- 使いやすさ: 管理画面の操作性や、Q&A・シナリオ設定のしやすさは非常に重要です。無料トライアルで実際に触ってみましょう。
- 対応言語: 日本語にしっかりと対応しているか確認が必要です。
- 機能: 必要な機能(例:有人チャットへの切り替え、外部システム連携、分析機能、ファイル添付機能、LINE/Slack連携など)が備わっているか確認します。複雑な自然言語処理(NLP) capabilitiesが必要かどうかも考慮します。
- 料金体系: 月額費用、初期費用、メッセージ数やユーザー数による課金など、自社の利用規模や予算に合った料金プランがあるか確認します。無料プランやトライアル期間があるかどうかも重要です。
- サポート体制: 困った時に相談できるサポート体制(メール、チャット、電話、FAQなど)があるか確認します。日本語でのサポートがあるかどうかも重要です。
- 導入実績: 同業種や同規模の企業での導入実績があるかどうかも参考になります。
導入における注意点と成功のためのヒント
ノーコード/ローコードだからといって、導入が全く容易というわけではありません。いくつかの注意点があります。
- 過信は禁物: ノーコード/ローコードツールは「万能」ではありません。複雑な判断や高度な自然言語理解が必要な問い合わせには、限界がある場合が多いです。対応範囲を明確にし、必要に応じて有人対応への切り替えをスムーズに行える設計が重要です。
- 事前の設計が鍵: ツールが使いやすいとしても、どのような質問に対応し、どのような会話の流れにするかという「設計」は、導入の成否を分けます。ここを怠ると、ユーザーにとって使いにくい、あるいは期待外れのチャットボットになってしまいます。
- 継続的な運用体制: チャットボットは「作って終わり」ではありません。ユーザーの利用状況を見ながら、Q&Aの追加や修正、シナリオの改善を続ける必要があります。誰がその役割を担うのか、社内での運用体制を事前に決めておくことが重要です。
- セキュリティとプライバシー: 顧客情報などを扱う場合は、ツールのセキュリティ対策やデータプライバシーに関する方針をしっかりと確認する必要があります。
これらの注意点を踏まえ、まずは小規模な範囲で導入し、効果を見ながら対応範囲を広げていく「スモールスタート」も有効な戦略です。
まとめ:ノーコード/ローコードで広がる中小企業の可能性
ノーコード/ローコードチャットボットツールは、これまで専門知識が必要でハードルが高かったAI対話システム導入の可能性を、中小企業のビジネスパーソンに大きく広げるものです。
これにより、限られたリソースの中でも、顧客対応の効率化、社内問い合わせ対応の迅速化、Webサイトでの情報提供強化など、様々な業務改善を実現できます。
もちろん、導入には事前の目的設定や運用体制の構築といった計画が必要です。しかし、ノーコード/ローコードツールを活用すれば、技術的な障壁に悩むことなく、自社のビジネス課題解決に集中できます。
この記事が、チャットボット導入を検討されている中小企業の皆様にとって、具体的な第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。「AI対話システムラボ」では、今後もチャットボットに関する様々な情報をお届けしてまいります。